違いのわかる大人
わたしが美術館・博物館好きになったのは、長女の影響が大きくて、孫が生まれる前はよく誘われて出掛けていました。わたしが大学受験に使う選択科目(共通一次)が地理だったこともあり世界史はそれほど詳しくなかったので最初はとても難儀しました。
ひとつの絵画から、その芸術家が生きていた時代や、芸術家自身の人生や、扱っていたテーマなど拘りだしたらキリがないぐらいたくさんの情報を読み取ることが出来ます。
またこのところタイミングが合わず観劇からも遠ざかっていますが、美術鑑賞も観劇も予備知識があるとないとではそこから感じ取れるモノが大きく変わってくると思います。
などと考えながら、わたしは時々、自分はどこに向かっているのかしら?なんて考えてしまいます。ただひとつ言えることは、もう若くはないので、あまり流行に流されたくはないということです。
それよりも、どこかのCMの受け売りじゃありませんが、『違いの分かる大人』になりたいです。
最近『カッコいい〇〇になりたい』などといった文言を耳にすることがあります。しかし『カッコいい』は、時代によって移り変わっていくもの。
そしてもっと深く突き詰めていくと『カッコいい』を決めるのは本人というより、『その人の生き方そのもの』なので、少し何かが変わったぐらいでなれる『カッコいい』なら、もはやそれは『ありきたり』の域を超えてはいないのではないでしょうか。
わたしはそれより『違いの分かる大人』になりたいです。その為にこれからも、いろいろな教養を身につけてこうと思います。
カラバッジョ
彼のあまりにも激動に満ちた人生の所以なのか、、、日本では、そこそこの美術ファンか美術史を学ぶ機会でもない限りカラバッチョという画家の名前がとりあげられる機会は少ないと思います。実際、大塚国際美術館のお勧めのコースでも、彼の作品はそれほど大きく取り上げられてはいません。
しかし、彼の作品を一度じっくり観ると、その臨場感溢れる描写や、光と影を自在に操る超絶技巧を目の当たりにして、まるで今その絵を観ている自分さえもが、その現場の目撃者にでもなったような生々しさを否が応にも感じてしまうのです。
その男、天才にしてならず者。
イタリアが誇る天才画家、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラバッジョ(1571-1610)。
光と闇の強烈な対比、圧倒的なリアリズムによって、西洋美術史上最大の変革を起こした画家と言われます。
しかしながら、その手に握られた絵筆はしばしば剣に持ち換えられました。
やがて殺人という取り返しのつかない罪を犯し、逃亡生活の末、38歳の若さで非業の死を遂げたその人生はまさに、光と闇そのものでした。
あべのハルカス美術館・カラヴァッジョ展より
あのいわゆるミケランジェロの本名は、ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ。ゆえに、あのシスティーナ礼拝堂やダビデ像などを手がけた人が、ミケランジェロと呼ばれ、この天才にしてならず者は、カラバッチョと呼ばれているのでしょうか。
彼は均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、ありのままのものを正確に、また強烈な明暗法(キアロスクーロ)によって劇的な情景として描いて評価されました。所謂バロックの先駆け的存在でした。
イタリア絵画で初めて静物画を描いたのも、なんとこのカラヴァッジョなんです。当時、こんなに枯れた葉っぱを描いたのも相当珍しかったそう。
その後のルーベンス、レンブラント、フェルメール、ベラスケス、ドラクロア、クールベ、マネもカラバッジョの影響を受けているというほどに非常に大きな影響を残した人だったようです。イタリアではミケランジェロとカラバッジョが最も後世に影響を与えたという評論家もいるぐらいです。
ライトが陶板に反射して残念ですが、このキアロスクーロが構図をさらに劇的にみせています。
この絵などは「暗い状況で暗い部分をわかるような露光で写真を撮ればこうなる、というように光をまともに浴びた顔が白く飛んでしまっている」という現象を非常にリアルに描写しています。
あまりにリアルすぎて、最初また陶板が反射してしまったのかと思ったぐらいです。
ちょっとブレイク
ちょっとここでブレイク。
◆システィーナ礼拝堂◆
BF3階で最初に見学したシスティーナホールですが、天井画部分は吹き抜けになっていまして、ここBF2階からも観ることが出来ます。ここからの眺めは全体から見渡せてこのホールの美しさがよりお分かりいただけるのではないでしょうか。
ここは個人的に一番大塚国際美術館らしい画像が撮れるスポットではないかと思っております。
レオナルド・ダ・ビンチ
さてミケランジェロとくれば、この人の話も少し。
ここ大塚国際美術館には、最後の晩餐やモナ・リザを含む全11点の作品が展示されています。
そしてわたしがフィレンツェのウフィツィ美術館でみて、ヴィーナス誕生と同じくらい印象に残ったのがこの受胎告知でした。
この作品はレオナルド初期の作品で、師匠ヴェロッキオの工房から独立した頃の作と推定されています。
テーマである受胎告知は、神によって遣わされた大天使ガブリエルがマリアの元を訪れ神の子を身ごもることを告げる場面。キリスト教では重大な教義のひとつとして多くの絵画で表現されてきました。
大塚国際美術館公式サイトより
レオナルド作品の特徴として、まず自然界に存在しないものは何ひとつ登場していないということ。神も精霊の鳩も、神秘的な光線もなく、象徴的な花々が咲く早春の野原の描写は植物観察の鋭いレオナルドの独壇場です。また右側の聖母マリアは腹部に黄金の布を巻き、同じ表現が「岩窟の聖母」にも見られることから、これはマリアの純潔を意味するレオナルド固有の記号とされています。加えて天使の栗色の巻毛の繊細な描写、「モナ・リザ」の背景にも似通った遠景のぼかし方など、画家20歳頃の才能あふれる傑作です。
◆岩窟の聖母◆
以下の作品は、レオナルドが1483年~86年頃に制作した「岩窟の聖母」と同構図の作品です。先に描いた作品は依頼主が、受取を拒否したため、レオナルドの作品に従い、アンブロ―ジョ・ディ・プレディスがこの作品を描いたとされています。
第一作目と違いこの作品では、天使が聖母の腹部を指す身振りがなくなっています。これは依頼主が聖母の腹部を指し示すという直接的な身振りを忌避したためだと考えられています。また頭上の光輪や十字架、翼が追加されたことで、聖母マリア、イエス・キリスト、洗礼者ヨハネ、天使の区別がしやすくなっています。
大塚国際美術館では、2枚の「岩窟の聖母」を並べて展示して、その違いを比較鑑賞することができます。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、レオナルドは寡作であるばかりか完成させた作品が少ない芸術家でした。同じく寡作のフェルメールがそうであるように、レオナルドの作品もまたその完成品の少なさからより希少価値や神秘性が増したともいえます。
◆白貂を抱く貴婦人◆
こちらは昨年、白石麻衣さんが“白貂のミューズ(女神)”として就任して話題になった作品です。
この作品は1489年から1490年ころにレオナルド・ダ・ヴィンチによって制作された油彩作品。現在ポーランドの国宝として指定されています。
描かれている人物は、当時レオナルドが奉仕していたミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾チェチリア・ガッレラーニで、ルドヴィーコの要請で描かれました。
本作品はモナ・リザ、ジネヴラ・デ・ベンチの肖像、ミラノの貴婦人の肖像とならび、わずか4点しか存在しないレオナルドの女性肖像画の1つなのです。
はい、今日は少しこぼれ話的な方向に行ってしまいました。明日以降もゆるゆると進めていきたいと思います。
本日のお庭
今朝は章姫の花が綺麗に咲いていました。これをみてわかるのは、やはり苺ってバラ科の植物なんだなってことです。今は終わってしまいましたが、わが家に咲く、ひとえのミニ薔薇によく似ています。
そして今日は天気が良かったので、じいが耐寒性植物と思い込んで買ってしまったベゴニアを日向ぼっこさせました。
それから、じいが100圴で入手した2袋で100円のタネから育ったラディッシュを収獲しました。とても可愛いです。
そして同じ画像に写り込んでいるのが、長女から誕生祝いでもらった園芸用のハサミと、今朝剪定していた時にとれたバタフライピーのタネです。
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