遺伝子組換え表示
何となく気になるけれど、本当のところよく分からない「遺伝子組換え表示」。スーパーに行っても「遺伝子組換えでない」と書かれた豆腐や納豆はあっても、「遺伝子組換え」と書かれた商品はどこにも見当たらない。「じゃあ心配ないのね」と思いたいがどうやらそうでもないらしい。
以前からこの表示制度には抜け穴が多いと指摘されている。また、この4月1日からの表示制度変更により、このままだと「遺伝子組換えでない」という表示ができなくなってしまうかもしれないのだ。
こんなところにも遺伝子組換え原料が?
現在、日本で販売や流通が認められている遺伝子組換え作物は8つ。このうち、主に流通しているのは、とうもろこし、大豆、菜種、綿の4つ。いずれも食用油の原料。
とうもろこしや大豆は、油のほかにもしょうゆや醸造酢にも使われている。その他、コーンスターチや果糖ブドウ糖液糖、水あめ、乳化剤、カラメル色素、加工でんぷんといった、加工食品の表示でよく見かける原材料や添加物など幅広く使われている。そしてこれらは、遺伝子組換え由来の原料である可能性がとても高い。
実は日本は世界でもトップクラスの遺伝子組換え消費国である。
国内では遺伝子組換え作物の商業栽培が行われていないが、日本はそもそも自給率が低く、大豆やとうもろこしなどのほとんどを、遺伝子組換え作物の栽培が盛んに行われている国々からの輸入に頼っているからだ。
日本の表示制度の抜け穴
日本には、遺伝子組換え食品表示制度があり、認可されている8つの作物については、遺伝子組換えであれば「遺伝子組換え」と表示しなければならないことになっている。当然、これらを原料とする加工食品や飼料にも表示すべきなのだが、実際に表示が義務づけられているのは33の食品群のみ。
例えば、豆腐、納豆、味噌には表示義務があるが、同じく大豆を原料とする食品であっても、しょうゆには表示義務がなく、また食用油や甘味料も対象外。
さらに言えば、家畜のえさには表示義務がなく、遺伝子組換えのえさを食べて育った家畜の肉や卵・牛乳・乳製品などの畜産品も表示を免れている。
また表示義務があるのは、重量順で上位3品目かつ、重量に占める割合が5%以上のものと限定されていて、加工食品の原材料の多くは遺伝子組換え由来の可能性が高いが、重量が4番目以降であれば表示しなくてもいいのだ。
例えば遺伝子組換え由来のでんぷんを使うとき、表示したくない企業なら、4位以下もしくは5%未満になるように配合して表示を免れたとしてもとくに問題ではないので企業にとっては抜け穴になり、消費者にとっては不十分な表示と言わざるを得ない。
国ごとに異なる制度
とうぜん国ごとに制度の内容は異なる。遺伝子組換えに関して世界一厳格なのはEUの表示制度。消費者の権利意識の強いEUでは、DNAやたんぱく質が残らないものも含め、配合比によらず、全原材料に表示義務がある。
韓国では、日本と同じように、DNAやたんぱく質が残らないものは表示対象外だが、義務表示の範囲は、以前は「上位5位まで」だったのが、2017年に「すべての原材料」へと広がった。台湾も最近、制度を改正し、EUの水準に近づいている。そんな中、日本だけ取り残されているような状況。
「遺伝子組換えでない」の表示がなくなる?
遺伝子組換えでない作物をどんなに頑張って分別しても、生産や流通の過程でどうしても遺伝子組換えのものが混入してしまう可能性がある。これを「意図せざる混入」といい、日本では5%までと定めている。それで現状は5%までなら、遺伝子組換えのものが混入していても「遺伝子組換えでない」と表示できるようになっている。
ところが、2017年度に消費者庁が設置した「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」で、「遺伝子組換えでない」表示を認める混入率を、現行の5%から「不検出」に引き下げるという報告がまとめられた。これは今の技術なら混入率をほぼ0%まで検出できるし、混入しているのに「遺伝子組換えでない」と表示するのは誤認を招くという意見が出たため。
確かにこれは一見正論のように見える。まず、いくら分別管理をしても、遺伝子組換えのものが混入するリスクを免れることはできない。混入率が「不検出」、つまり限りなく0%に近くないと表示が認められないというのは、表示制度の厳格なEUの0.9%という数値を見ても明らかに厳しすぎる。
また今回の表示法改正では、遺伝子組換え原料を使った場合の「遺伝子組換え」という義務表示に関しては見直しがなく、対象も範囲も広がらず、「遺伝子組換えでない」という任意表示だけ、要件を変更することとなった。
表示義務のゆるい日本では、たとえ100%遺伝子組換え原料を使っていても、「遺伝子組換え」とは書かずに済むケースがほとんど。それなのに、手間や費用をかけて非遺伝子組換えの原料を調達したほうは、「遺伝子組換えでない」とは書けなくなる可能性が高まった。
これは消費者の声に応え、遺伝子組換えでないものを届けようとしている企業の意欲を削ぐことになりかねないではないか。
今回の制度改正を消費者庁は、消費者の利益のためと言っているが、本当に消費者の利益になるのか?
遺伝子組換えの表示に消極的な企業は、必ずコストアップになると言っている。しかし「値段が上がりますが、それでもいいですか?」と言うだけで、原料費の違いや証明にかかる費用によって実際にどのくらい高くなるのかについて詳細な説明などなされていないのが現状。
一方で安心して口にできるなら、多少値段が上がることを受け入れる消費者も少なくないはず。
「知る」「選ぶ」というのはわれわれ消費者の権利。たかが表示と思う人がいるかもしれないが、表示の問題は自分たちの食べ物や環境、農業、食べ方とか暮らしのあり方をどう考えるかということに直結している。
「食べたくない」「子どもには食べさせたくない」と思っても、表示されていなければ避けることができない。その一つが遺伝子組換え食品。
食文化や社会の慣習は国によって違う。しかし消費者の知る権利はどこの国でも保障されるべきで、EUで出来ているのなら日本でも十分実現可能と考えることは決して夢物語ではないと思いたい。
わが家のネモフィラの苗
早いもので、今月ももう後半。あのタネから発芽したネモフィラの苗も順調に育っている。
間引いてポットで育てている苗も立派になってきた。天気のいい日はこうやって日向ぼっこさせてあげるとより元気になってくれるだろう。
ウッドプランターの寄せ植えたちも元気元気。
きっと春になれば、この寄せ植えの中に、ネモフィラが仲間入りするに違いない。
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